丹波・丹後の妖怪あつめ

京都府北部(丹波・丹後地域)の怪異妖怪伝承を紹介するブログです。

小豆洗いシリーズ

あずきあらい

あずきあらい


間人の浜から上がった所にある深い溝には、“あずきあらい”と言って、狐が小豆を洗うような音に化けて出ていた。
このあずきあらいは、近所の赤子を水瓶の中に落として殺したことがあると言われている。

『丹後町の民話 -第二集-』「あずきあらい(間人)」より


小豆洗いシリーズ、京丹後編。
「音に化ける」ってなんかカッコイイですね。

狭間のあづき洗い

狭間のあづき洗い (はざまのあづきあらい)


物部村と志賀郷村の間にある狭間峠は木々が鬱蒼と茂り、昼でも暗い所だった。
峠に沿って犀川という川が流れていて、そこに“狭間のあづき洗い”が出るとの噂があった。
ある時、村人が峠を歩いていると、白い着物を着た目の吊り上がった素足の老婆を見かけた。
老婆は長い白髪を背で束ね、岩の上でザルに入れた小豆を洗っていたという。
村人は老婆の気味悪い仕草に驚き、逃げ帰ったという。
“狭間のあづき洗い”の噂は広まり、峠でその老婆を見たという者が出てきた。
狭間峠はいつ通っても「ザーザー」という小豆を洗うような不気味な音が聞こえ、通行人を怖がらせていたという。

『由良川子ども風土記』「狭間のあづき洗い」より


小豆洗いシリーズ綾部編その②。
人前に姿を現すタイプの小豆洗いです。
ただの老婆という可能性もありますが……。


小豆洗い婆

小豆洗い婆 (あずきあらいばば)


中上林日置谷では、夜廻りをしていると、どこからともなくザクザク、ザクザクと小豆を洗う音がするという。
不思議に思って音の方へ近づいて見ると、ピタリと止む。
これは“小豆洗い婆”の仕業だとされている。

『上林風土記 資料集』「小豆洗い婆の伝説」より


小豆洗いシリーズ綾部編。
中上林では、夜廻りの時には「小豆三升、米三升、合わせて六升、ガ~サガザ♪」という歌を歌ったんだとか。

米洗いの女

米洗いの女 (こめあらいのおんな)


宮津には“あづき洗い”や“米洗いの女”と呼ばれる妖怪がいた。
それらは夜の九時~十一時頃になると、村や町の橋の下などに現れたという。

『天橋立秘帖 史実と伝説集 2』「橋立小女郎」より


小豆洗いシリーズ宮津編。
夜の宮津には“米洗いの女”だけでなく、片目の怪物や大入道、綺麗な道を作って人を騙すものなど、色々な妖怪が現れたそうです。物騒すぎる。

小豆洗い

小豆洗い (あずきあらい)


夜久野町上千原のユリという所には“小豆洗い”が棲んでいるという。
この妖怪は夜な夜な現れては小豆を洗うという。
姿を見た者はいないが、ザラザラザラザラと小豆を洗う音だけが聞こえたという。

夜久野町額田の釈迦堂川に“小豆洗い”がいて、夜更けになるとザルに小豆を入れてザッザッと洗うような音をさせる。
正体は狸や川獺だと言われているが、実際に見た者はいない。
ある男が音のする方へ行ってみると、一枚のザルが川を逆流していくのを見たという。

三和町芦渕岡部の藪には“アズキアライ”がいるという。
また、王歳神社付近には「小豆一升米一升」と言って、ガシャガシャ音がする所があるという。

『下夜久野村誌』「小豆あらい(額田)」
『夜久野町史 第一巻(自然科学・民俗編)』「小豆洗い(上千原)」
『昭和五十年度 民俗採訪』「俗信」より


全国各地に伝承のある有名妖怪“小豆洗い”です。
ご多分に漏れず、丹波丹後地域でも小豆洗いの話は多く語り伝えられています。
というか、ほとんど全ての地域にあります。小豆洗いのネームバリューすごい。
とはいえ地域毎に微妙な違いがあったりするので、細々と紹介していこうと思います。

昔紹介した“盗人口の怪異”の中にも小豆洗いがいます。
何気に福知山は小豆洗い出現事例が多いです。

盗人口の怪異

盗人口の怪異 (ぬすとぐちのかいい)


下天津の宮津街道(国道176号線)に「盗人口」と呼ばれる所がある。
夜にここを通ると、様々な怪異に遭遇するという。

① 小豆洗い
夜更けに崖下の川(由良川)で何かが「フウフウ、ブツブツ」と言いながらザルで小豆を洗っている音が聞こえてくる。
その音は人の歩みに合わせ、崖下をついて来るという。

② 砂まき小僧
崖の上でガサガサと音がしたかと思うと、小石や砂が通行人目がけて撒かれる。
これも人の歩みに合わせ、ガサゴソと音を立てながら小石や砂をぶつけてくるという。

③ 灯り盗み
提灯を持って歩いていると、急に蝋燭の火が消えることがある。
中を覗くと蝋燭がなくなっていたり、時には提灯を持つ手が何か柔らかいものに触れられたと思った途端、提灯ごと何者かに奪われるということもあった。

④ 火の玉
雨降りや霧の深い夜は幾つもの火の玉が飛ぶので、村人はこの時は通らなかったという。

⑤ 一つ目小僧
大きな荷物を持って通ると、背丈が一丈(3m)以上ある一つ目の大男が、両手を広げて立ちはだかる。
通行人は恐怖で腰を抜かし、気がつけば荷物をなくしているという。
村人はこの妖怪を“一つ目小僧”と呼び、最も恐れた。

⑥ 髪を梳く娘
川岸に松が数本あり、その中に枝が横に長く伸びた雄松があった。
晴天の月夜にここを通ると、美しい少女が松の枝に白い両脚を前に垂らして座り、長い黒髪を櫛で丁寧に梳いていることがある。
少女に見とれている内に、持っていた荷物がなくなっているという。


このように様々な怪異が起こるため、土地の人々はいつしか怖い目に遭う、盗人に遭うということから「盗人口」と呼ぶようになり、夜間の通行を控えたという。


『語りつぐ 福知山老人の知恵』「下天津盗人口」より


豪華六本立て。まさに怪異妖怪のオンパレード。
ちなみにこの話には余談があり、「自分も幽霊になれば妖怪に遭遇しないのでは?」と考えた人が、櫛を口に咥え、ざんばら髪に白装束の幽霊のコスプレをして盗人口を通ってみた、ということがあったそうです。
この村人が無事怪異を避けられたかどうかは不明です。

現在の宮津街道は車の往来が激しく、妖怪が出そうな雰囲気はありません。
夜に通っても出遭うのは鹿ばかりです。

伝承地:福知山市下天津

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