丹波・丹後の妖怪あつめ

京都府北部(丹波・丹後地域)の怪異妖怪伝承を紹介するブログです。

天狗

駒沢大僧上

駒沢大僧上 (こまざわだいそうじょう)


長安寺の開山堂の隣に“駒沢大僧上”という高位の天狗を祀る祠がある。
昔、長安寺の小僧が鐘撞堂で掃除をしていると、大きな坊主が来て「私は今から全国へ旅に出かけるから、お前もついて来ないか」と言って山門の石段を飛び降りた。
すると小僧も引きつけられるように坊主のお供をすることになり、京都の鞍馬寺、紀州の熊野山、箱根山から出羽の羽黒山と、一週間程の旅に連れて行ってもらった。
一方、寺では小僧が行方不明になったことで捜索が行われたが、人々は神隠しにあったと諦めていた。
ところが一週間後、太い藤葛で手足を縛られ、寺の鐘楼の横に寝かされている小僧を発見した。
小僧は「大きな坊さんのお供をして東日本を歩いてきた」と答えたが、その坊主こそ駒沢大僧上の位を持つ天狗だった。
その後も二、三回、小僧がいなくなることがあったが、人々は「また天狗さんのお供をして出かけたのだ」と言って、誰も心配しなくなったという。
駒沢大僧上は長安寺の守り神とされ、「最祥院様」とも呼ばれている。

『語りつぐ 福知山老人の知恵』「駒沢大僧上(天狗さん)」より


返却時に小僧を縛る必要はあったんだろうか……。

長安寺
長安寺・山門と鐘撞堂。
境内の薬師堂には、三上ヶ嶽(大江山)の三鬼を退治した麻呂子親王の作とされる薬師如来像が祀られています。

開山堂
開山堂。
長安寺開祖・眼光恵禅師の木像が安置されているそうです。
お堂の周囲を探しましたが、駒沢大僧上の祠らしきものは見当たりませんでした。
お寺の方にお聞きしたところ、祠は開山堂ではなく寺の裏山(姫髪山)にあるらしい、とのこと。
(祠の正確な位置は不明)

*参考書籍には「大僧正」ではなく「大僧上」と書かれていたので原文のままの表記にしました。


伝承地:福知山市奥野部・長安寺


柏原の天狗

柏原の天狗 (かいばらのてんぐ)


今回は丹波市柏原町に伝わる天狗の話を五つ紹介します。

挙田の崖の上に、天狗松という大きな松があった。
この松を切ると祟りがあると言われ、誰も手をつけなかった。
昔、この松に天狗が棲み、梢から由良の愛宕山(氷上町)目がけて飛んで行ったという。

北中の長助という猟師が山へ猪狩りに行った。
山中で猪を待ち構えていると、そばにあった六本の樅の木が大きな音を立てて揺れ出し、大蛇が現れた。
長助は驚き、大蛇目がけて鉄砲を撃ったところ、鼻の高さが30cmもある真っ赤な大きい顔の天狗が現れ、「こら長助、これ以上撃つならお前の命をもらうぞ。命が欲しけりゃとっとと消え失せろ」と怒鳴った。
長助は肝を潰し、転ぶようにして山を駆け下りたという。

沖田の杢助という男が山へ猟に行き、大きな鳥に鉄砲を向けて撃とうとした。
すると「こら待て」という怒鳴り声と共に天狗が現れ、杢助の鉄砲を掴み、見る間にへし曲げてしまった。
杢助はあまりの恐ろしさに飛んで帰った。
数日後、再びその山へ行ってみると、へし曲がった杢助の鉄砲が捨ててあったという。

三人の百姓が権現山の中腹に小屋を建て、泊まり込みで炭焼きをしていた。
ある日の夜、三人が小屋で夕食を食べていると、突然、獣の遠吠えのような唸り声が聞こえて来た。
一人で外に出るのは怖いと、三人は連れ立って小便をしに小屋を出ようとしたが、いきなり天狗が飛び込んで来て睨みつけた。
肝を潰し、腰を抜かして震える三人をよそに、天狗は小屋の真ん中に座り込み、睨みつけながら酒や握り飯を平らげた。
そして天狗は赤い顔を更に赤くして、三人を睨みつけたまま、ずっしずっしと小屋から出て行ったという。

江戸時代、柏原藩の家臣に、星合と滝という武術に優れた侍がいた。
だが禄高は滝の方が上だったので、星合は悔しがり、権現山に「力をお与え下さい」と願をかけ、毎晩山に登って槍の修行に励んだ。
そして二十一日目の満願の夜、星合が山頂で一心に祈っていると、大地が裂けるような轟音が響き、背の高い天狗がにょっきと現れた。
星合が槍を突きつけると、天狗はその穂先を掴んでげらげらと笑い「お前はなかなか勇気がある奴じゃ。日頃の熱心な修行に免じ、天狗の力を授けよう」と破れ鐘のような声で言い、空高く舞い上がって姿を消した。
星合は不思議に思いながら家に帰り、風呂に入って汗を流し、手拭いを絞った。
すると、手拭いはばりばりと音を立ててねじ切れてしまった。
仕方なく別の手拭いを出して同じように絞ったが、またもやねじ切れてしまったので、星合は「これは天狗が授けてくれた力に違いない」と言って喜んだ。
それから間もなく、星合と滝は藩の殿様の御前で試合をすることになった。
試合が始まり、互いに槍を交わした瞬間、星合は滝の槍を跳ね上げた。
すると、それ程強い力で跳ねたわけでもないのに、滝の槍は軽々と空に舞い上がった。
こうして星合は試合に勝ち、その後、滝を凌ぐ禄高を得たという。

『柏原の民話とうた』「天狗五話」より


荒っぽい天狗が多い。


伝承地:丹波市柏原町挙田、北中など


天狗の太鼓

天狗の太鼓 (てんぐのたいこ)


ある老人が山の中を歩いていると、コンコロ、コンコロと太鼓の音が聞こえてきた。
山の中で太鼓の音が聞こえるのはおかしいと思ったが、やはり音は聞こえてくる。
これは、天狗が大きな木の切り口を叩いているのだと言われていた。

『大江町風土記 第2部 くらしと文化』「てんぐの話」より




伝承地:福知山市大江町河守


天狗になれなかった男

天狗になれなかった男 (てんぐになれなかったおとこ)


小谷の山の頂上に「天狗さん」と呼ばれる宮がある。
昔、橋谷のある若い男が「天狗にしてやるから天狗さんの宮に籠もって願をかけろ。そうすればお前も天狗になれる」という夢のお告げを受けた。
男は早速天狗さんの宮に参り、一週間程籠もり続けた。
そして「そろそろ天狗になれただろう」と思い、頂上にある大岩の上から飛んでみた。
ところが男はまだ天狗になっておらず、落ちて足の骨を折ったという。
ある老人は「一週間程度の行では天狗になれない」と話していたという。

『大江のむかしばなし』「天狗のまね」より


天狗への道は長く険しい……。
「お前も天狗になれる」という台詞から考えるに、男に夢を見せて誘ったのは小谷の山の先住天狗でしょうか。
仲間を増やそうと思ったのかな。


伝承地:福知山市大江町小原田


天ヶ岳の天狗/つち

天ヶ岳の天狗 / つち (あまがたけのてんぐ / - )


昔、品田の天ヶ岳に天狗が棲んでいた。
天狗は松の古木に棲んでいたが、その松は落雷と台風で枯死したという。
この山にある天ヶ岳神社は、天狗を「天ヶ岳明神」として祀ったという伝承もある。

また、天ヶ岳には“つち”という蛇がいるという。
つちを見た人は高熱にうかされ、死亡することもあると言われている。

『区誌品田』「天ヶ岳の天狗」より


伝承地:京丹後市久美浜町品田


天狗さん

天狗さん (てんぐさん)


漆谷の分水嶺に近い山に、立て岩という岩がある。
その山の峰近くに二帖敷き程の台座があり、そこは「天狗さんの休憩所」と呼ばれている。
また、同じ谷の上の方に燈籠杉という木があり、そこにいつでも火が灯るという。
天狗さんは千本松という松から真向かいの立て岩へ行き、更にそこから燈籠杉へ回って遊んでいるという。

昔、加衛門という老人が、天狗さんにつままれて行方不明になった。
村人たちは鐘や太鼓を鳴らし、「加衛門返せ」と言いながら捜索すると、四日目に青ざめた顔の加衛門が帰って来た。
それから天狗さんは非常に恐れられたという。
ところがある時、木樵が千本松と燈籠杉を切ろうと考え、木にヨキ(斧)を打ち込んだ。
天狗さんの木を切る時は、打ち込んだヨキがそのまま木についていれば切っても良いが、ヨキがポオンと放り出されている場合は「天狗が放った」と言って切らないという。
すると翌日、打ち込んだヨキが放られていたので、木樵は「これは恐ろしい。こんなもの切ったらいかん」と思い、切るのを止めたという。
だがその後、別の木樵が「天狗もくそもあるもんか」と言って、燈籠杉を切ってしまった。
その木樵は燈籠杉を売って儲けたが、帰宅して間もなく死亡したという。

『伝承文芸 第十号 -丹波地方昔話集-』「天狗さんの話」より


伝承地:京都市右京区京北井戸町


  • ライブドアブログ