丹波・丹後の妖怪あつめ

京都府北部(丹波・丹後地域)の怪異妖怪伝承を紹介するブログです。

姫の祟り

姫の祟り (ひめのたたり)


昔、木津の今井集落の裏山に城(熊谷砦)があった。
ある夜、有田集落の百姓は城山の麓の池に人影を見つけ、「こんな夜更けに人が出回るはずはない。敵の回し者か」と思い矢を射かけた。
だが近づいて確認すると、矢を受けて倒れていたのは城の姫だった。
その後、百姓の家に不幸が続いたので、その罪を恐れ、屋敷の中に祠を建てて姫の霊を祀った。
やがて肋骨の痛みを治してくれる神として信仰されるようになり、祠には全快した人の手作りの小弓が沢山奉納されたという。

『ふるさとのむかしむかし』「若宮の荒神さん由来」より


姫様は夜の池で何をしてたんでしょうね。


伝承地:京丹後市網野町木津

圓光寺の多羅樹

圓光寺の多羅樹 (えんこうじのたらじゅ)


天正七年(1579)八月九日、黒井保月城は明智光秀に攻められ落城した。
その夜、圓光寺の鉄山禅師は境内に人の気配を感じ、庭を窺ったところ、姉妹と思われる二人の美しい姫が荒武者に暴行されていた。
助けようにも人手はなく、自身は病で動くことが出来ない。鉄山は心の中で読経しながらやがて意識を失った。
次に目覚めた時には既に荒武者の姿はなく、無念と苦悩に満ちた表情の姫たちの死体が横たわっていた。
鉄山は姫たちの亡骸を埋葬すると、そばに生えていた多羅樹(タラヨウ)の枝を卒塔婆にして懇ろに供養した。
すると翌年の春、まるで姫の魂が乗り移ったかのように多羅樹の枝は芽を吹き、葉を生い茂らせた。
その後、鉄山の枕元に二人の姫が現れ、多羅樹の横に淡島大明神を祀ってほしいと告げた。
そして鉄山は多羅樹の横にお堂を建て、淡島大明神を奉祀したという。
淡島大明神は性病や婦人病に霊験があるといわれ、病に悩む男女が多く参拝したという。
また、村のある男は叶わぬ片思いに悩んだ挙げ句、物干しから思い人の肌着を盗み、それを鈴の緒として百日間神社に参拝したところ、恋が成就したという話も伝わっている。

『由緒を尋ねて』「圓光寺の多羅樹」より


淡島神社とタラヨウ
圓光寺境内にある淡島神社とタラヨウの木(左)。
案内板によると、このタラヨウはこれまでに何度も枯れたり折れたりしましたが、不思議とその度に芽を吹いて甦ったそうです。


タラヨウの木
木の幹は傷んでいるものの枝ぶりは良く、葉は青々と茂っています。
今も姫の魂が宿っているんでしょうか。


伝承地:丹波市春日町多田・圓光寺


光る椋

光る椋 (ひかるむく)


天正七年(1579)、八木城は明智光秀に攻められ落城した。
城主・内藤備前守の姫は坊の谷にある寺に逃げ込んだが、明智軍に見つかり殺されてしまった。
その後、寺の池のそばに椋の木が植えられたが、この木に姫の魂が宿り、夜な夜なキラキラと光るようになった。
村人たちは池のそばに小さな祠を建て、姫の冥福を祈ったという。


『郷土よしとみ』「八木嶋に伝わる話」より

タクシーに乗るお姫さん

タクシーに乗るお姫さん (たくしーにのるおひめさん)


昭和三十四、五年頃、多紀郡城東町の小学校で話題になった。
タクシーが車塚古墳の横を通ると、若い女が立っており「車に乗せてくれ」と言う。
そして「城東町の泉の塔のそばまでやってくれ」と言うので連れて行くと、女はおらず、シートが濡れていた。
車塚は都のお姫さんが葬られているという伝説があるため、女はそのお姫さんだろうと噂された。

『現代民話考[3] 偽汽車・船・自動車の笑いと怪談』「タクシーやバスを呼びとめる死者」より


いわゆる「タクシーの幽霊(タクシーに乗せた客が幽霊でいつの間にか消えている)」という怪談の一種ですが、乗客がお姫様の幽霊というのは珍しいですね。
本当にお姫様だったのかはわかりませんが……。

車塚古墳
雲部車塚古墳。
周囲を濠に囲まれた前方後円墳で、四道将軍・丹波道主命が埋葬されているという説もあります。(『丹波篠山五十三次ガイド ふるさとの探訪』)

車塚古墳の横
古墳の南側には広めの道路があります。
姫はこの辺りでタクシーを拾ったんでしょうか。


伝承地:丹波篠山市東本庄・雲部車塚古墳付近



2025/12/19 現地写真追加&加筆・修正

糸織姫

糸織姫 (いとおりひめ)


江戸時代、丹波亀山藩主の松平某に“糸織姫”という美しい妾がいた。
ところが彼女を妬む人々が結託し「糸織姫には前から約束を言い交わした男がいる」という話をでっち上げ、藩主に報告した。
この讒言を信じた藩主は怒り狂い、糸織姫を稲荷神社のそばで斬り殺した。
すると糸織姫は藩主や讒言した人々を恨めしそうな顔でキッと睨み、「松平家七代に祟ってみせる」と叫んで絶命した。
その後、松平家には身体に障害があったり精神に異常を来す子供ばかりが生まれるようになり、人々は糸織姫の怨霊が祟ったのだと噂した。
そしてその頃から、亀山城の高台にある大銀杏の木に大きな白蛇が棲むようになった。
この白蛇は糸織姫の怨念が凝り固まったものだと言われている。

『丹波の伝承』「亀山城の大銀杏」より


この他、亀山城には白蛇の棲む銀杏の話(“大銀杏の姫の亡霊”)があります。
姫の幽霊に憑かれたり白蛇の棲み処にされたり、この銀杏も大変ですね。


伝承地:亀岡市荒塚町・丹波亀山城(城址)


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