丹波・丹後の妖怪あつめ

京都府北部(丹波・丹後地域)の怪異妖怪伝承を紹介するブログです。

死神

首吊れ

首吊れ (くびつれ)


ある飛脚が手紙の配達先に向けて走っていた。
だが途中で便意を催してしまい、偶然近くにあった便所に飛び込んだ。
すると天井から「首吊れ。おもしれえぞ。首吊れ。おもしれえぞ」という声がする。
飛脚は「そんなに面白いことなのか」と思い、試そうとした。
だが仕事中であることを思い出し「先に手紙を届けて、戻って来た時に首を吊るから待っててくれ」と言って便所を飛び出し、目的地に向かった。
無事に手紙を届けた帰り道、飛脚は再びその便所に飛び込んだ。
ところが、中では別の男が首を吊ってぶら下がっていた。
首吊り死体を見た飛脚は驚き、「首吊りとはこんなに恐ろしいことなのか」と思い直し、首吊りをせずに帰ったという。

『久美浜町の昔話 ふるさとのむかしばなし』「首つりの話」より


過去に紹介した福知山市の“首吊り坊主”のように、人を誘って首吊りをさせる嫌な妖怪です。
ただこちらは姿を見せず、声だけで首吊り自殺に誘うようです。
飛脚の「仕事が終わってから首吊るので待ってて」というくだりは『反古のうらがき』にある妖怪“縊鬼”の話と似ています。
首吊りを後回しにしたおかげで助かるところや、代わりに他の人が首を吊ってしまうところも同じです。
近年のものだと『新耳袋 第六夜』にも「庭の木を見ていると無性に首を吊りたくなったが、仕事を済ませてからにしようと思った。仕事を終えて戻って来ると、別の人が首を吊っていた」という、これまた似たような話が掲載されています。


首吊り坊主

首吊り坊主 (くびつりぼうず)


昔、みすぼらしい格好をした巡礼者が、ある農家に宿を求めた。
農家は一度は断ったものの、「庭の隅でも良いから泊めてほしい」と言うので、ムシロを渡して泊めることにした。
その家には嫁がいたが、体調を崩して長い間寝たきりになっているという。

夜、巡礼者は庭の隅の俵置き場で、俵にもたれかかり眠っていた。
すると、どこからともなく綺麗な坊主が現れ、俵の上に乗って部屋の方へおいでおいでと手招きをした。
それに呼ばれるように、部屋からハチマキを巻いた青い顔の嫁が出て来て、坊主がいる俵に乗った。
坊主は上から縄をかけて輪をこしらえると、嫁を促してそれに首をかけさせようとした。
首を吊らせようとしていることに気づいた巡礼者が、咄嗟に「いかん!」と大声で制止すると、坊主はたちまち姿を消してしまった。
正気に戻った嫁は「死神に誘われて首を吊りそうになったけど、止めてもらって命が助かった」と、巡礼者にお礼を言ったという。

『大江のむかしばなし』「遍路さんと首つり嫁」より


この奥さんを救った巡礼者は弘法大師だったそうです。

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