丹波・丹後の妖怪あつめ

京都府北部(丹波・丹後地域)の怪異妖怪伝承を紹介するブログです。

熊の恩返し

熊の恩返し (くまのおんがえし)


昔、西大浦村の三人の猟師が山で熊穴を見つけ、鉄砲を構えて見張っていた。
すると穴から大きな熊が現れ、猟師たちの前に座り、手を合わせて涙をこぼした。
二人の猟師は「良い金になる」と喜んで撃とうとしたが、もう一人の心優しい猟師は熊を逃がしてやった。
だがしばらくすると別のオス熊が出て来て、また両手を合わせて命乞いをした。
優しい猟師は先程と同じように逃がそうと訴えたが、二人の猟師はオス熊を撃ち殺して村へ持ち帰った。
それから一年後の十二月、三人の猟師は例年通り山へ入ったが、大雪に見舞われ遭難してしまった。
数日後、二人の猟師の死体が谷底から発見されたが、優しい猟師の死体は見つからなかった。
家族は諦めて葬式を済ませたが、春になる頃、死んだと思われていた優しい猟師が戻って来た。
猟師は「雪山で遭難したが熊が助けてくれた。木の葉が敷き詰められた熊穴の中で寒さをしのぎ、腹が減れば熊の足の蜜を舐めた。帰りはその熊と生まれたばかりの小熊が雪をかき分け、村まで道案内をしてくれた」と話したという。

『舞鶴の民話 第三集』「熊のおんがえし(大浦)」より


同市三浜にも、雪山で遭難した男が熊に助けられる話があります。
ただこちらは恩を仇で返したため残虐エンドになっています。


伝承地:舞鶴市平


熊と恩知らずの男

熊と恩知らずの男 (くまとおんしらずのおとこ)


ある男が雪の日に三浜の山を越えようとしたが、吹雪に見舞われ立ち往生した。
そこに大きな熊が現れ、男を洞穴に連れ込むと「舐めろ」と言って手を差し出した。
舐めてみると熊の手は砂糖のように甘かった。そうして男は熊の手を舐めて空腹を凌いだ。
十日後、無事に村へ戻った男は熊に助けられたことを人々に話した。
すると話を聞いた猟師が「熊の居場所を教えてくれ。礼はする」と持ちかけてきた。
男は欲に目が眩み、恩を忘れて猟師を洞穴へ案内すると、中から件の熊が出てきた。
早速猟師は銃で撃とうとしたが、熊は両手を合わせ「待ってくれ」と頼んだ。
何をするのかと見ていると、熊は自分が助けた恩知らずの男を捕まえ、股から真っ二つに引き裂いた。
熊は男を惨殺した後「さぁ撃て」と言ったが、猟師は撃つことが出来なかったという。

『わが郷土 丸山小学校創立百周年記念誌』「熊と恩しらずの男の話 -小橋-」より


「命の恩熊を裏切った人間がその熊に復讐される」という話は静岡県にも伝えられています。

雪で道に迷った猟師が熊穴で三匹の熊に助けられる(すごく美味しい熊の手を舐めて飢えを凌ぐ)→友達の猟師に話すと「案内して」とせがまれる→案内して熊を三匹とも撃ち取る→助けられた方の猟師が「この熊が一番多く手を舐めさせてくれたんだよ」と言って親熊の手を持とうとする→その熊の死体が喉に噛みつき猟師は殺される。(静岡県浜松市)
……というものです。

ちなみにこの話が載る『静岡県伝説昔話集』は国立国会図書館のデジタルコレクションで閲覧することが出来ます。


伝承地:舞鶴市三浜


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