丹波・丹後の妖怪あつめ

京都府北部(丹波・丹後地域)の怪異妖怪伝承を紹介するブログです。

蛙の宮の石

蛙の宮の石 (かえるのみやのいし)


今田町上小野原の住吉神社(蛙の宮)の境内に大きな石が三つある。
同じく、6km程南にある酒滴神社(三田市藍本)にも数個の大石が転がっている。
これは昔、住吉神社と酒滴神社の神が領地を巡って喧嘩をした時、双方から投げ合った石だと伝えられている。
そのため、小野原の人と藍本の人は縁組みをしなかったという。
これを無視して縁組みをすると、片方が死んだり、貧乏になったり、火事に遭ったりと不吉なことが多いと言って忌み嫌われていた。
また、住吉神社の神前には、一本の木から七色の葉が出る「七色木」が生えているという。

『今田町史』「蛙の宮の石」
『多紀郷土史考 下巻』「今田村」より


住吉神社(蛙の宮)
今田町の住吉神社。
丘の上にある神社で、毎年十月に篠山の三大奇祭の一つ「蛙踊り」が行われます。
蛙踊りは八人の踊り手の内三人が締太鼓を叩き、残り五人が太鼓の音に合わせて簓を鳴らし、「ヘイッヘイッヘイッ カエロカエロ」と言いながら三角形に飛び跳ねるという神事です。
住吉神社はこの蛙踊りと、社殿のある丘が大蝦蟇に似ていることから「蛙の宮」と呼ばれるようになったそうです。(『神社案内板』)

神社裏手にあった謎の石群
境内をぐるりと回ってみましたが、残念ながら神様が投げたとされる大石も七色木らしき木も見当たらず。
神社裏手の脇道に大小様々な石がまとめて置いてありましたが……これが件の大石だったり?

酒垂神社本殿
三田市藍本の酒滴神社。(本殿)
素戔嗚命のお告げを受けた村人が裏山の洞窟から霊酒を発見したという伝説があります。
こちらもそれらしい石は見当たりませんでした。
本殿のすぐ裏は山になっているので、石はそこにあるのかもしれません。


伝承地:丹波篠山市今田町上小野原・三田市藍本


蛙に負けた蛇

蛙に負けた蛇 (かえるにまけたへび)


戦後間もない頃、ある村の畑の中に一坪程の小さな池があり、沢山の蛙が棲んでいた。
そこへ50cm程のカラスヘビ(シマヘビ)が蛙を追って飛び込み、足に食らいついた。
すると池の中のトノサマガエルがカラスヘビに飛びつき、それを合図に他の蛙も次々に飛びかかった。
そして池は大きな騒ぎになり、カラスヘビは這う這うの体で逃げ出したという。

『現代民話考 [9] 木霊・蛇・木の精霊・戦争と木』「蛙に負けた蛇」より


伝承地:京丹後市大宮町のどこか


蛙の化けもん

蛙の化けもん (かえるのばけもん)


昔、延利に富豪の家があり、そこで働く使用人の女がいた。この女は顔立ちがよく働き者で、皆から好かれていた。
しかしこの女はほとんど喋らず、盆正月にも実家に帰ることもなかったので、どこの生まれなのか誰も知らなかった。

ある年の盆、珍しく女が「祖父の初盆なので実家に帰らせてほしい」と言ってきた。家の旦那は快諾して休暇を与えた。
旦那は前々から女の出自を知りたがっていたので、この機会にと密かに彼女の後をつけて行った。
女は峠を越え、山奥の谷へと進んでいく。
「こんな所に家なんてあっただろうか」不思議に思いながら旦那はついて行った。
だが、曲がり角で女を見失ってしまった。辺りを捜してみてもどこにもいない。
ふと道の下を見ると、田圃に沢山の蛙が集まって騒々しく鳴いている。
その鳴き声があまりにうるさかったので、旦那は石を田圃に投げ込んだ。
石が蛙の集団に当たったかと思うと、あれだけ騒がしかった声がピタリと止んだ。
旦那は女を追うことを諦め、家に戻った。このことは誰にも言わなかった。

そして盆が終わり、女が戻ってきた。
女は「実家に帰り法事をしていたら、突然どこからか大きな石が降ってきて、それが和尚の頭に当たって死んでしまった。その葬式や後始末に追われ、戻るのが遅くなってしまった」と謝った。
この話を聞いた旦那は、女が突然消えたこと、蛙の集まりに石を投げたこと、ピタリと鳴き声が止んだことなどを思い出し、まさか彼女は“蛙の化けもん”ではないかと考えた。
その夜、女は挨拶もなしに家から姿を消した。やはり彼女は蛙の化けもんだったのである。

『季刊 民話 1975冬 創刊号』「奥丹後物語 草稿」より


蛙社会にもコミュニティや役職があり、更に盆行事などの風習まであるというのは面白い世界観ですね。
しかし、わざわざ人間に化けてまで働きに出た理由は何だったんでしょう。

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