丹波・丹後の妖怪あつめ

京都府北部(丹波・丹後地域)の怪異妖怪伝承を紹介するブログです。

魚に憑かれた男

魚に憑かれた男 (さかなにつかれたおとこ)


ある年の春、繁という男が夜中に曼陀羅口という所を通ると、川の中から賑やかな声が聞こえてきた。
見ると、知人の男二人が川に浸かり「鯉がいる」「いや大鯰だ」と言いながら、ずぶ濡れの姿でバチャバチャと魚を追いかけ回していた。
だが川には切り株が浮いているだけで魚影は見えなかった。
繁が「鼬に化かされたんだよ」と言うと、二人は渋々川から上がって来て大笑いしたという。

また昭和の頃、おトラという老婆がよその家で風呂に入り、帰ろうとして外に出た途端「帰り道がわからんわいやー」「鼬に化かされたわいやー」と大声で喚きながら、家の裏をグルグル回っていたことがあったという。

『丹後の民話 第四集 ふるさとのむかしばなし』「魚に憑かれた男」より


まだ耕地整理が進んでいない頃、竹藤地区の川のあちこちに深い淵があり、大鯰やタライ一回り半もある真っ白な鰻などが棲んでいたそうです。


伝承地:京丹後市久美浜町竹藤


川を渡る火の玉

川を渡る火の玉 (かわをわたるひのたま)


ある老人が家へ帰る途中、二箇橋の辺りまで来ると、大きな蛍の塊のような火の玉が川に転がっていた。
老人が「へん、ちょこざいな」と言うと、火の玉は消え「ピショピショ」と言って川を渡ったという。
イタチが化けていたと言われている。

『丹後の民話 第四集 ふるさとのむかしばなし』「化かされ話」より


「二箇橋」は国道482号線と府道659号線(二箇河辺線)が交わる辺り、鱒留川に架かる橋。

風鼬

風鼬 (かぜいたち)


宇治郡山科御陵村(現・京都市山科区御陵)の吉田庄吉という男が、同村の北詰端という所で畑仕事をし、午後四時過ぎに帰宅しようとした。
すると一陣の旋風が吹き、それと同時に庄吉は地面に倒れた。
一緒にいた男が駆け寄ると、庄吉は全身が真っ黒に焦げ、数ヶ所に傷を負った状態で死んでいた。
男は驚いて警察署に駆け込み事情を訴えた。巡査医員が庄吉の死体を検視すると、その傷は獣の鋭い爪に引っかかれたような痕だったという。
付近の者はこれを「“風鼬”のせいだ」と言っていたという。風鼬とは、他の所でいう“鎌鼬”の類いだろうか。


『明治期怪異妖怪記事資料集成』朝野新聞 明治十六年七月三日「鎌鼬」より


引っ掻き+丸焼きの合わせ技で命を奪っていく恐ろしい妖怪です。しかも無差別っぽい。
鎌鼬は日本各地に伝承されている有名な妖怪ですが、この風鼬のように「対象を丸焦げにして殺害する鎌鼬」という話は聞いたことがありませんね。
そういう意味ではかなり珍しいタイプの鎌鼬なのでは。
そもそも全く別種の妖怪という可能性も……。

酒ごんご、油ごんご

酒ごんご、油ごんご (さけごんご、あぶらごんご)


木津の龍献寺の下にある旧道は、古い杉や欅が茂っていて昼でも薄暗い所である。
そこには高さ1m程の石垣があって、根本には30㎠ほどの石を抜いた穴が空いている。
その穴には年を取ったイタチが棲んでいて、人が通ると「酒ごんご(五合)、油ごんご(五合)」と声がかけられるという。
イタチの声を聞いた者は、その通りの品を穴の前に持って行かなければ祟りがあると言われていた。
そのため、この道を通る時はなるべく声を聞かないよう、耳を押さえて足早に通り過ぎていたという。

『丹後の伝説 ふるさとのはなし』「酒ごんご、油ごんご」
『季刊 民話 1975冬 創刊号』「奥丹後物語 草稿」より

  • ライブドアブログ